1スレ393氏隣の席の少女

主要人物紹介

詩織
長いサラサラとした黒髪の美少女。
傍から見たら小動物を思わせる、誰からも愛らしいと思われる容姿。
里奈とは幼馴染。
性格は内向的で他者に依存しやすい。そこを付け込まれて、里奈の欲情処理対象として堕とされていく。

里奈
きつめな感じのする美少女。
周りのことがよく見えるが自分のことがよく見えないタイプ。
癖の強い髪がコンプレックス。とはいっても、それは詩織の髪に対してのコンプレックスに過ぎない。
自分が幼馴染の詩織とはまったく違うタイプの美少女ということに自身が気づかなかったのがきっかけ。
彼女にとって、物事の基準は詩織であった。ある意味、詩織至上主義。
しかし、それは捩れた形で形成され歪みきった形で現れた。

由香
良くも悪くも不良な少女。
素はなかなかの美少女だが、濃いメイクと脱色染髪された髪と態度で台無しになっている。
性格は奔放なものだが、感性は真っ当な部類。ごく普通の不良少女。
可愛いものが好き。
詩織と知り合ったこと里奈に利用されて、知らず知らずに詩織を里奈の欲望の姿に仕立て上げていき、それに飲み込まれていく。





しおりは透き通るかのような白磁のような肌に、整った顔立ちの清楚そうな外見の少女だ、その髪以外は。
背中の中ほどまで伸ばされた髪は脱色されており、艶のない黄ばんだ汚らしい金髪だった。
その金髪は清楚な顔立ちのしおりにはまったく似合っておらず、しおりの姿をいやらしく飾り立てていた。
道行く途中でしおりに周りからの視線が突き刺さり、それを感じるたびにしおりの白い頬に赤いものが浮かぶ。
しおりは顔を伏せて黙々と歩き続けた。しおりの傷んだ金髪が頬に触れるたびに、変わり果てた自分の髪の感触で背筋が冷たくなる。

―私の髪、一体どうなってるの?

しおりはひたすらそんなことを考えながら、ある美容室へと歩き続けた。

のんきに寝息を立てる詩織に里奈は苛立ちを込めた視線を送る。
柔らかそうな白い頬に、可愛らしい鼻立ち、長めのまつげの下にあるくりくりとした黒い瞳は今は閉じられている。
そして、長くてしっとりとした黒髪は窓からの日の光を受けて艶かしい色艶を放っている。
誰が見ても可愛いと思える詩織の容姿を、里奈は憎々しげに見つめた。
まったくもって気に入らない、詩織は自分にないものをすべて持ってる。
里奈は詩織の黒髪に指を入れる。癖の強い自分の髪と違うサラサラとした黒髪の感触に、里奈はますます眉間に力を入れる
昔から里奈は詩織と比べられてきた。何かと一緒になることの多かったこの二人の関係が良好なものかといえば、詩織はそう思っていただろう。里奈はそうではなかった。学校の成績は常にわずかだが詩織のほうが上。容姿では里奈はとてもじゃないが適わない。
里奈の詩織に対する感情は、仄暗いものへと変わっていき嫉妬という形になった。
そして、先日里奈が密かに思っていた思い人が詩織に告白をするところを偶然見たところで、暗く澱んだ感情が動き始めた。しかも、詩織はその告白をあっさりと断ったのだ。
理由は分からないが、その光景を見た里奈はどうしようもなく惨めな気持ちになった。そして、どす黒い感情はゆっくりと確実に動き始めた。
(それにしても、のんきに寝てるわね。薬がよっぽど効いてるのかしら?)
詩織に薬を盛って、この物置じみた使われなくなって久しい一室に連れ込むのはあまりにもあっさりとできた。あとは…
里奈はビニール袋から二つの箱を取り出した。その箱には髪が金髪の化粧の濃い若い女がプリントされていた。
二つの箱―脱色剤を手にした里奈は口を歪めて薄く笑った。


薬局でこのハイブリーチを買うのはなかなか恥ずかしかったが、詩織に対する暗い感情の前では些細な問題だった。

―だって、詩織はさらに恥ずかしいことになるんだから。

暗い感情に沈んだ里奈は、まず詩織を辱めることを思いついた。
そこで思いついたのは詩織のトレードマークともいえる長い黒髪だった。詩織の黒髪は癖一つなくサラサラと靡き、女子達からの羨望の的だった。その髪は童顔の詩織にはよく似合っていて、詩織をますます愛らしい容姿に仕立て上げていた。
その髪がすっかり変わってしまえば詩織はどうなるのか、たとえばこのハイブリーチのパッケージに載っている女の金髪のような。
不似合いな金髪になった童顔の詩織の惨めったらしい姿を思い浮かべると、里奈はすぐに行動を開始した。そして、とうとう詩織の黒髪を脱色するところまできた。
里奈はハイブリーチのパッケージを開けて薬剤を取り出して脱色剤を作っていく。脱色剤自体は簡単に作れたが、かなりキツイ臭いを発する脱色剤に里奈は顔をしかめた。しかし、この異臭のする薬剤が詩織のヴァージンヘアの黒髪を犯すと思うと、笑みが浮かんでくる。
里奈は脱色剤の入ったボトルを持ってのノズルを詩織の黒髪に近づける。そして、ノズルから異臭を発する白い乳液が垂れて詩織のヴァージンヘアに絡み付いてくる。里奈はその様子を見て胸の奥が高鳴るのを感じた。
そして、そのまま慎重に詩織の髪に脱色剤を塗りたくり始めた。
一本目の脱色剤を使い切った詩織の髪はバックの部分が完全に乳液に塗れていた。女子の羨望の的だったサラサラと流れる髪は乳液に塗れて異臭を発する髪になっていた。白い乳液に塗れた髪は黒から茶色へと変わりつつあった。
詩織の髪の変化に里奈の興奮はとても抑えられるものではなくなっていた。詩織に対する暗い感情もすっかり吹き飛んでいた。その代わりの感情が強烈に里奈の心を支配した。

―もっと、もっと詩織の髪を犯したい

里奈は二本目の脱色剤の入ったボトルを手に取った。

二本目の脱色剤のボトルのノズルを詩織の頭頂部に近づける。詩織の頭頂部の髪はバックの脱色されつつある髪とは違い、まだ黒髪で陽光を受けて艶やかな輝きを放っていた。
ふと、里奈は詩織の黒髪が犯されることが切なく感じた。詩織の美しい黒髪がとても大切で儚げなものに思えてきたのだ。
いったん脱色剤のボトルを詩織の頭から遠ざけると、里奈は自分の鼻を詩織の頭頂部の黒髪に近づける。軽く鼻で息を吸うと、脱色剤の異臭に慣れつつあった鼻腔に甘い香りが広がった。
甘い詩織の黒髪の匂いで里奈の劣情はたがが外れてしまった。憐憫じみた感情は一切里奈の欲情の燃料となった。欲情の対象は詩織の黒髪で、それを発散するには詩織の黒髪を陵辱し尽くすしかなかった。
里奈は脱色剤のボトルを掴むと、詩織の頭頂部から脱色剤を垂れ流し始めた。粘性の強い白い乳液は詩織の頭頂部で小さな山を作ると崩れるように詩織の髪の上に広がっていった。里奈は櫛の形をしたボトルのノズルで脱色剤を丹念に広げていった。
里奈の手によって脱色剤が広げられた詩織の髪は濡れ髪とは違うペタンコとした感じで白い乳液に塗れて奇妙な風貌と化していた。
その詩織の姿に胸を高鳴らさせながら、里奈は最後に毛根部分の脱色を始めた。詩織の魅惑の黒髪を生やしている毛根まで陵辱できることに里奈は感謝じみたものさえ抱いていた。
乳液に半ば固められた詩織の髪は簡単に持ち上がり、白い頭皮とまだ乳液の手の届いていない黒髪が里奈の目の前に晒される。里奈は興奮が抑えきれない様子でノズルを頭皮に押し付ける様にあてがった。そして、たっぷりと白い乳液を出すと頭皮と黒髪に丁寧に塗りこんだ。
詩織の毛根まで犯していることに無上の感動を覚えている里奈に、それは聞こえてきた。

―くぐもったような息遣いの音

そのとき、里奈のほてった体が急に冷えるのを感じた。―詩織が目を覚ましたのかもしれない。
里奈は反射的に詩織の顔を見た。

詩織の顔は苦痛に耐えるようにゆがんでいた。
形のいい眉は寄り、目はきつく閉じられているかのようだ。可愛らしい形の鼻からは息が絶え絶えに、それでも強く出ていた。桜色の唇はきつく結ばれて、時折開くとあえぐような音を出した。
里奈は硬直して詩織の表情を見守った。詩織の表情はかなり激しいものだったが、それでも目を覚ます様子はなかった。
そこで里奈は詩織に薬を盛ったことを思い出した。あの薬はかなり強力な睡眠薬で、本来なら医療にも使われる特殊なものだった。
薬の効用を思い出した里奈に再び欲情がたぎり始めた。そして、愛らしい顔を無残な苦悶に染める詩織への視線が熱いものになっていった。かなり強い脱色剤の頭皮への刺激に耐える詩織がたまらなく愛おしく思えてきのだ。
里奈は次から次へと詩織の髪を持ち上げて頭皮と残りわずかな黒髪に白い乳液を塗りたくっていった。
自分の息も興奮で絶え絶えになっているのに里奈が気が付いたときには、詩織の髪は完全に白い乳液に覆われていた。
最後にボトルにわずかに残った乳液を形のいい詩織の眉に塗りつける。乳液を塗られた眉はさらに寄り、詩織の眉間に深い皺を作った。
自分の仕事に満足した里奈は脱色されつつある詩織の髪をよく見ようと近づいた。
頭頂部周りの詩織の髪は乳液の中で明るい茶色の色合いを見せていた。それに里奈は感激じみた感情に押しつぶされそうになる。
次に始めに脱色剤を塗りたくったバックの部分を見る。そこは―

―金髪よ!あの詩織が、あの黒髪の詩織が金髪になってる!

詩織のバックの髪は白い乳液の中で黄色い―金色とも言えなくもない―色合いを里奈に晒していた。
異臭を発する乳液に塗れて金髪へと脱色された詩織の髪は里奈にとって劣情を噴出させるものだった。
かつては黒髪とは思えない様な詩織の髪の変貌に、里奈の理性は完全に吹き飛んだ。



詩織の髪は艶やかな黒髪で流れるように梳き、愛らしい詩織の姿を清楚に映えさせていた。
しかし、詩織の美しい黒髪は今はキツイ臭いの白い乳液に塗れて無残に脱色されつつあった。
頭頂部の髪は乳液の中で明るい茶髪へと変わり、バッグの髪は乳液の白色に溶け込むかのような金髪に脱色されつつあった。
詩織の髪の惨状に、里奈はこの上ない興奮に満たされた。脱色剤に塗れて茶髪と化した詩織の頭は、どうしようもないほどにいやらしく見える。
バッグの金髪になりかけの髪は、あの愛らしかった詩織を別物に変えているかの様だった。
詩織の美しい黒髪を生やしている毛根は脱色剤によってこの上ない陵辱を味わっていることを詩織の決して覚めない苦悶の表情が語っている。
里奈は興奮のあまり震える手をごくごく自然に自分のスカートの中、そしてパンツの中へと入れた。視線は詩織の明るい茶髪と金髪混じりの頭部を捉えて離さない。
里奈の指は躊躇なく女の部位に突き刺さり、今までに経験したことのないほど激しく動いた。里奈の口は半開きになりそこから涎が垂れだし、頬は赤く上気して弛緩して里奈の顔をだらしなく変えていった。
白い乳液の中で異臭を発しながら少しずつ茶色から黄色っぽい色合いに変わっていく詩織の髪に、ますます里奈の興奮は高まっていっく。里奈の頭には詩織の髪を辱める原因となった男のことは完全に消え去っていた。
絶頂に達するたびに、詩織の髪が茶髪から金髪に近づいているとさえ里奈は確信じみた妄想を浮かべていた。里奈にはもうただひたすら噴出する純粋な劣情と、それを開放することしか頭になかった。
かなりの時間の幾度かの絶頂の後、再び里奈は詩織の脱色されている髪を間近で見つめる。
詩織の頭頂部の髪はすっかり茶色から黄色っぽい色合いにが変わっていた。バッグの髪は完全に乳液の白色に溶け込むかのような明るい色になっていた。
詩織の美しい黒髪のヴァージンヘアは、白い乳液によって異臭を発しながら脱色されていき、金髪へと変貌を遂げていた。
詩織の髪が完全に金髪に変わってしまったことを知った里奈は、今まで経験したことのない多幸感に包まれた。異臭の乳液に塗れた金髪に浮かぶ詩織の顔に里奈は手を伸ばす。脱色剤に塗れた詩織の眉の色も抜けて、詩織の白い肌に溶けるかのよう映った。
そして、ふっくらとした詩織の頬に指を這わす。すべすべとした頬の感触に里奈はうっとりとした表情を浮かべた。里奈の指は先ほどの自慰行為でべたつき、それは詩織の白い頬を汚していく。
と、そのとき指先に違和感を感じた。里奈の詩織の頬を汚す指に何か黒いものが付いていたのだ―それは縮れた里奈の陰毛だった。激しい自慰行為のときに里奈の指に絡まったのだ。
里奈はその恥毛をまじまじと見つめた。そして、次に詩織の金髪となった乳液塗れの髪を見た。
その瞬間、里奈はあることを気が付いた。同時に劣情が再び湧き上がってくる。
黒々とした自分の恥毛と金髪に脱色されてしまった詩織の髪―

―詩織の髪、私の毛よりも…いやらしい毛になってる…

―恥毛という毛は剃り落とすなどして形を整えたりするもので、毛そのものを手入れをすることはない。したがって、恥毛というのはたいていは傷んでおり、下着の中に隠すようなものである。さらには見られると恥辱である

―そんな恥ずかしい毛でもある自分の傷んだ恥毛は、それでも黒いままだ。色が変わるほど傷んではいない。しかし、詩織の乳液に塗れた異臭を発する髪は金髪に変わり果てるまで傷んでいる

―だから、詩織の金髪は自分の恥毛よりも恥ずかしくいやらしい毛だ

正常な思考を失った里奈はそう考える。そして、自身の陰毛以下の毛になってしまい、今も乳液に陵辱され続けている詩織の金髪をどうにかしなければならない、というように狂った思考をまとめた。
どうにかといっても、具体的なものは一切ない。ともかく、詩織の傷みきった金髪を急にどうにかしたくなったのだ。吹き上がる劣情による思いつきがさらに狂った思考をかき乱していく。
そして劣情に完全に支配されてしまった里奈の思考はぐるぐると回り、おぞましいことを結論付けた。

―そうだ、私の下の毛以下の髪なら、私の下の毛にしちゃえばいいんだ


里奈は空になった脱色剤ボトルの櫛の形をしたノズルを外して、自分の股間の下に置いた。そして、パンツを脱いで自分の股間をボトルの上に露出させる。そして、そのまま、指を突っ込んで自分の中をかき回し始めた。しばらくすると、ボトルの中には里奈の潮が貯まっていた。
そして、里奈が躊躇いもなく下腹部に力を込めると股間から黄色を帯びた液体がこぼれだして来た。黄色を帯びた液体は里奈の尿だった。あらかじめ、用を足していたため普段のように出なかったが、潮と合わせるとボトルの中をそれなりの量が貯まった。
里奈は潮と尿の入ったボトルにふたを閉めると、そのままボトルを振り出す。しばらくすると、ボトルの中は残っていた脱色剤と潮そして尿が混ざり合った黄色く濁った泡を浮かべる液体になっていた。
その液体のにおいは脱色剤の臭いに混じり、気分を悪くする臭気を発していた。しかし、その臭いは正気を失った里奈にとってはどんな香水よりも芳しいものだった。
その液体の入ったボトルに櫛のノズルをつけると、里奈は詩織へと向き合った。詩織の髪を陵辱する乳液はすでに脱色の推奨時間をとうに越えて液体状から泡状へと変わりつつあった。詩織の髪は薄黄色になりかけて、脱色剤に溶かされ続けていた。
里奈は液体の入ったボトルのノズルを詩織の髪に当てて、黄色く濁った液体を詩織の髪に塗りたくり始めた。泡状になりかけた白い乳液に、黄色く濁った液体が混ざり、薄黄色に色が抜けつつある詩織の髪に汚らしいグラデーションを作った。
里奈はその液体をノズルから出しながらノズルの櫛で詩織の髪を梳いていった。ノズルの櫛が詩織の金髪を梳くたびに、汚らしい色合いの黄ばんだグラデーションが詩織の髪に広がっていった。里奈は懇切丁寧に詩織の金髪を梳いていった。
ノズルの櫛が詩織の髪を梳くたびに、詩織の頭は小さく震えた。正気を失った里奈にはそれが詩織が喜んでいるかのように見えた。
詩織の髪が汚らしいグラデーションに覆われたとき、もう詩織の髪の色と黄ばんだグラデーションの区別は付かなくなっていた。液体に覆われた詩織の髪は脱色剤の異臭のほかにキツイ臭気を発していた。
里奈はそんな詩織の髪に鼻を近づけて臭いを嗅ぐ。鼻腔を突き、腹の中を搾り出すような詩織の髪の臭気は里奈を大いに満足させた。
そうして、詩織の髪は里奈の股間に生える恥毛と同じく潮と尿に塗れることになった。そのことは里奈に詩織の髪が自身の恥毛と同等になったことを示していた。

―いえ、まだまだ。だって私の下の毛は黒いけど、詩織の髪は金髪だわ。脱色した下の毛が脱色してない下の毛よりも傷んでるわけなんてないもの。

そのとき、ふと思い出したことがある。今回のことにあたり、里奈は髪の脱色のことについてある程度調べていた。その中に脱色した髪がその後どう生えるか、というものがあった。
その記憶に正気を失った里奈の口端がつりあがる。
里奈はビニール袋から料理などに使うラップを取り出した。そして臭気を発する黄ばんだ色合いとなった詩織の髪をまとめてそのラップで巻いていく。もとより、始めからそうするつもりだったのだ。そして、詩織の髪が完全にラップに包まれると、里奈は部屋の片づけをはじめた。
部屋の片付けを終えた里奈はラップ越しに詩織の髪を触った。その感触は想像以上に柔らかい感触だった。
いまだに苦しそうな息を漏らす詩織に切なげな目を向けると、そのまま里奈は部屋を後にした。始めから詩織をこのまま放置するつもりでいたのだ。

―うふふ、脱色したあとの髪は癖の強い髪が生えてくることがあるの。あれだけ脱色剤に漬けられた詩織の髪はどんな髪が生えてくるようになるのかしら。

もしかしたら、あの黒髪は生えてこなくなるかもしれない。もしくは里奈のような癖の強い髪を生やすようになるのかもしれない。または―

―下の毛のような縮れ毛が生えてくるかも♪これで詩織の髪は私の下の毛になるのね♪

始めからこうして詩織の髪を陵辱するつもりでいたが、目的と動機は完全に変わってしまっていた。しかし、里奈はそんな些細なことはまったく気にならなかった。
今も自分の下の毛を生やすようになるように調教を受けている詩織のことを思い浮かべると、里奈の足はますます軽くなっていった。

―詩織、今度あったらどんな髪になってるんだろう、楽しみだなぁ




美しい黒髪から傷んだ金髪に、そして里奈の陰毛になりつつある詩織の髪は、脱色が始まりかなりの時間が経過していた。
意識が戻りつつあった詩織がまず感じたのはお腹の中をかき乱されるほどの吐き気だ。その原因が異様きわまりない臭気だと気が付くまで、詩織は口からよだれをたらしてあえぎ続けていた。
その次は頭―頭皮を襲う強烈な灼熱感だった。まったく未知の激痛に詩織は反射的に手を頭伸ばした。頭に巻かれた何かを剥ぎ取ると、指先が湿った何か感触を伝えた。
言葉にならない痛みにか細い悲鳴を漏らしながら、薬の影響で朦朧とする詩織は必死に部屋から出た。自分の頭を濡らしている何かを洗い流さそうと詩織はふらつく足で廊下にある洗面所に向かった。
鼻腔を刺激する臭気と頭皮を襲う痛みに必死に耐えながら、詩織は何とか洗面所にたどり着き、水道の蛇口を力いっぱい捻った。据え付けられた鏡すら見ることもなく、吹き出す水に詩織は頭を突っ込みそのまま頭を濡らす何かを洗い流し始める。
頭を洗う指はぬめるモズクのようなものが絡み、頭を洗う詩織の指に絡みついた。その奇妙な感触も気にしない―それが何かを知らないまま詩織は冷たい水道の水で頭を洗い続けた。
しばらく頭を洗い続け、指先を汚す気味の悪いぬめりの感触がようやくなくなってきたときに、詩織はようやく気が付いた。頭を洗う指が感じるいつもの感触―髪を洗うときに感じていた指先の感触がいつもとまったく違うことに。
詩織は勢いよく動かしていた指の動きをいったんとめて、ゆっくりと確かめるように指を動かし始めた。
詩織の黒髪は水に濡れても跳ねるように弾み、しっかりとしたボリュームを詩織の指先に伝えていた。しかし、今洗っているモズクのような何かはひどく柔らかく、ひどくまばらな感じが―
その瞬間、詩織は顔を上げた。そして、それは目の前の鏡に映っていた。
鏡の中の人物の愛らしい造作の顔立ちの頬は青ざめていて、その大きめな黒い目は見開かれている。目の上を縁取る眉はその肌に溶けるかのような奇妙なもの。そして―

―え?誰なの…

鏡の中の人物の髪は詩織とは違い金髪だった―ほとんど色の抜けた髪に、薄い斑の黄ばんだ色合いの髪を金髪といえるのなら。
その人物の髪はどうやら濡れ髪のようだが、濡れてもしっかりとしたボリュームを保っていた詩織の黒髪とは違い、頭に張り付く感じの髪だ。
濡れてもきちんとまとまり、詩織の可愛らしい姿を包んでいた黒髪とは違い、鏡の中の人物の金髪はあちこちに広がり、鏡の中の可愛らしい姿を別のものに変えているかのようだった。
鏡の中の人物の顔が急に歪む、それと同時に詩織は口から反吐を吐き出した。もう、吐き気は我慢できないところまで来ていた。
そして、廊下に嗚咽が響き始めた。


由香はごくごく普通の少女だ。
きちんと整った目筋鼻筋の顔はけばけばしいメイクで覆われて、髪は脱色と染髪で清潔感が意図的に削がれてしまったかのような金茶色の

髪で無造作に背中に掛けている。
長い付けまつげの上のまぶたは濃いメイクで厚ぼったい印象を与えるものだった。
耳にはいくつかのピアスがつけられていて、照明の光を鈍く反射している。
結局、由香はごくごく普通に不良少女として周囲から見られていて、本人もそれは否定はしない。
なんだかんだで、周囲の評価と自分の評価が一致した由香はやはり普通に不良な生活を楽しんでいたし、それなりにそのように振舞ってき

た。
そんな由香が日も暮れた学校の廊下を歩いているのは単純な理由―忘れ物を取りに来たのだ。こっそりと学校に忍び込んだ由香は目的のも

のを回収してさっさと薄暗い学校から出るべく、早歩きで歩いていた。
そんな由香の耳に奇妙な音が聞こえてくる。水が流れる音と、誰かのすすり泣く様な音が。
その奇妙な音に由香は怪訝な表情を浮かべた。―誰かがこんな時間に学校にいるのか?
とりあえず、由香はその音の方向に向かうことにした。別段理由のない、ただの好奇心からだった。
音を頼りに廊下を歩いていると、洗面所から聞こえてくるようだった。そのまま足を進める。そして、洗面所にたどり着いた由香は奇妙な

ものを見た。
薄暗い照明に照らされた、薄黄色い―所々黄ばんだ汚らしい何かが震えているのを。
さらには周囲の悪臭に由香は混乱した。酸っぱいような、胃の中を掴れるかのような臭いが。
黄ばんだ汚らしい何かがどうやら蹲ってる女生徒の髪らしく、奇妙な音は勢いよく出る水道の水と黄ばんだ髪の蹲ってる女生徒のすすり泣きの声だと気が付くのに時間が掛かった。
悪臭の正体は洗面台にぶちまけられた吐しゃ物と、自分も何度か使ったブリーチ剤の臭いだと由香はどうにか見当をつけた。
混乱する頭で何とか状況を整理すると―髪をブリーチ剤で脱色した女生徒が洗面所でゲロを吐いてすすり泣いてる。
自分で出した結論の馬鹿馬鹿しさに由香は軽く顔をしかめる。それなりに自由な校風のこの学校でも、わざわざそこで髪を脱色をするよう

な人物なんているわけない。、
それでも、このゲロを吐いてすすり泣いてる女生徒の状況はその馬鹿馬鹿しい結論以外思いつかない。それで、由香は確実な手段として本

人に直接聞くことにした。
蹲って震えている女生徒の肩に手を掛ける。肩に掛かった女生徒の黄ばんだ髪に手が触れると、由香は思わず手を離した。
女生徒の黄ばんだ髪は、ぶよぶよとした感触で―排水溝に詰まった髪の固まりを思い出させるような感触だったからだ。
髪を何度か脱色した経験のある由香でもこんな髪は知らない。いや、これは髪といっていいものなんだろうか?そもそも何をしたら髪がこ

んなものになるのか、由香には想像すらできなかった。
それでも肩を触れられたことに女生徒は気が付いたらしく、のろのろとした動きで由香のほうを振り向いた。

―ひぃ!

その女生徒の顔を見た由香は短く悲鳴を上げた。
女生徒の顔は血の気が失せていて、大き目の目は赤く充血していた。口は半開きになってそこからは、吐しゃ物はもうないのか透明の液体

を垂れ流していた。
眉はほとんど見えないほどに色が抜かれており、女生徒の顔をのっぺりとした不気味なものへと変えてしまっていた。
女生徒は由香の顔を見ると、何かをつぶやくように口を動かし始めた。それは、うわ言のような口から漏れだし由香の耳に届いた。

―どうしようわたしのかみがこんなになちゃったどうなってるのわたしのかみがおかしいのこんなかみに

不気味に声を漏らす女生徒に由香は、恐怖を覚えて後ずさった。
しかし、同時にこの声が聞き覚えがあることにも気が付いた。

―え?嘘よ、あの詩織がこんな姿なわけなんてない


由香にとっては詩織は隣の窓際の席のクラスメイトである。可愛らしい容貌の詩織の姿や仕草は、隣の席の不良をそれなりにまじめにこなしている由香にとってはむず痒いものを感じさせるものだった。
ある日の午後の授業の時に詩織は珍しくうたたねをしていたことがあった。ふと目に入ったその寝顔がなんとも可愛らしくて、由香はその顔をまじまじと見つめていた。
白くて柔らかそうな頬は陽光で暖められて赤みを帯びて、桜色の唇からはかすかな寝息が聞こえていた。長いまつげのまぶたは降りていて詩織の大きめな黒い瞳を覆っている。
詩織の背中を流れる黒髪は、とても櫛通りがよさそうで日の光を受けて艶やかに輝いていた。髪を脱色して金茶色に染めている由香としては、それを後悔じみた気分にさせると同時に、羨ましいと思わせた。
自他共に不良としている由香でも可愛いものは好きだ。しかし、そんな由香の眼福は無粋な教師によってあっさりと終わってしまった。昼寝を堪能していることをからかうように問題を答えるのを指名された詩織はあわてて目を開け、恥ずかしそうに顔を伏せた。
日の光で赤みの増した頬はますます赤くなり、あわてて開かれは瞳はわずかに潤んでいた。優等生の珍しい様子に午後特有のだらけたクラスの雰囲気は和やかになり、由香の胸の奥をどこか暖かなものにするものだった。
ただ、隣からの視線に気が付いた詩織の怯えたような顔に由香はさすがに傷ついた。さすがに結構辛いものがある。
それからだろうか、由香が詩織のことをよく視線で追うようになったのは。さすがにすぐ近くで不躾に視線を向けることは自重したが。
詩織という少女は女性的な丸みを帯びつつある体で、決して機敏なほうではなかった。性格は引っ込み思案なようで、友人との受け答えも聞き手に回っていることが多いようだった。
詩織の可愛らしい様子をこっそり見るのが、由香の密かな楽しみになるのはそんなに時間が掛かることではなかった。
その中で由香が気になったのは詩織の幼馴染という里奈という少女だった。里奈は詩織とはまったく違う感じの人物で、どうも由香は苦手だった。里奈は怜悧な感じのする少女で、どこか余裕のない冷たい感じがする、というのが里奈の印象だった。
顔立ちは愛らしい造作の詩織とはこれもまた対照的なものであり、きちんと整っているものであったが、どこか鋭利なものを感じさせた。
詩織と里奈、この印象のまったく異なる二人がたびたび行動を共にしていることが由香にはどうにも不思議だった。それでも詩織はそんなことは気にしてはいないようだったので、それで何とか由香は納得した。
里奈の、時折感情の分からないような視線を詩織に送っているのが気にはなっていたが。

それよりも、この目の前の得体の知れない水に濡れて吐瀉物に汚れた不気味な女生徒が、あの可愛い詩織だとは由香には信じられなかった。信じたくもなかった。
それでも由香の口からは反射的に声が出てくる。
「…詩織、詩織なのっ!」
名前を呼ばれたらしい女生徒は、虚ろな黒い眼差しを由香に向けて、眉毛の見えない削がれてしまったかのような顔を縦にゆっくり振った。それに、由香は背筋がさらに冷たくなるのを感じる。
詩織の血の気の失せた白い顔は、薄暗い照明のかなで黄ばんだ髪に包まれて、ごみ山に埋もれる汚物に塗れたマネキンを思わせるものだった。
全身に冷たい何かになでられるかのような悪寒の中で、由香はほとんど無意識で次の行動を始めた。身近な―少なくとも自分は身近に感じていた人物のあまりの変わり様に動いていなければどうにかなってしまいそうだったのだ。
細かく不安定に震える詩織を吐瀉物と水に汚れていない床に座らせると、洗面台の蛇口を閉めて由香はほとんど駆け足で自身の教室からタオルと体操着とジャージを持ってきた。ともかく、詩織のあの水と吐瀉物に塗れた姿を何とかするためだった。
自分の汗の臭いが染み込んだジャージを詩織に着せるのは、普段の由香なら気恥ずかしさでためらっただろうが、今はそんなことはさっぱり気にならなかった。
水と吐瀉物に汚れた詩織の制服を、苦労しながらながら由香は何とか剥がしていく。詩織はまったくされるがままで、時折痙攣するかのようにびくりと震えるだけだった。
下着だけになった詩織の白い肢体は薄暗い照明の中に浮かび上がるように映った。
膨らみかけた乳房は白い清楚なレースブラの中でその存在をしっかりと示して、白い肉が艶かしくブラの隙間から見えている。詩織が震えるたびに、その柔らかそうな発展途上の乳房はしっかり揺れた。
詩織の女性の部分を隠すのは飾り気のないものの、それでも白いレースの下着なことに由香はわずかに驚いた。しっとりと湿っているようなのには深く考えないようにした。
洗面所に満ちる悪臭に詩織の甘い体臭が混ざるのを感じて、由香はどうにか頭の混乱が収まってきたのを感じる。それとは別に、普段から意識していた女生徒の半裸を間近で見られる機会に、同性愛の趣味のない由香も自分がわずかならずに興奮しているを感じていた。
しかし、白い体にべっとりと張り付くぐちゃぐちゃに脱色され尽くされたのような黄ばんだ髪が、詩織の姿をまったく別の風貌へと変えてしまっていた。それに昔見たB級SF映画の下手な汚らしいスライムに捕食される犠牲者の姿を、由香は思い出した。
本来ならたっぷりとした美しい黒髪に包まれていたであろう詩織の半裸に、由香はやるせない気持ちになった。そのまま、タオルで汚れた詩織の体を拭いていく。
そして詩織に何とか自分の体操着とジャージを着せる。ジャージから詩織の溶けかけた髪を引きずり出すのにはかなりの勇気が必要だった。手にまとわり付くひどく柔らかい感触に慄きながら、何とか由香はその仕事を成し遂げた。
「詩織、しっかりして!どうしたの、その髪!」
ただ成すがままにされていた詩織に由香は声を掛ける。放心状態だった詩織もどうにか意識がはっきりとしてきたようだった。たどたどしいながらも、由香の問いかけに答える。

「わか…らない…の…、気が付いたら…気持ち悪くなって…頭が熱くて…痛くて…それで、洗面所で頭を…洗ったの…そうしたら…そうしたらね…私の髪が…変なの…おかしいの…」
そこまで告げて、詩織の瞳から涙が溢れてくる。由香は思わず詩織を抱きしめた。詩織の体は悪寒に包まれていた由香にさえ、さらに冷たいものだった。詩織の嗚咽はしばらく続いた。
小刻みな震えからゆっくりとした呼吸になんとか落ち着きを取り戻した詩織の話を由香は何とか聞き出せた。
詩織はいつの間にか眠ってしまっていたらしく、気が付いたら年に一度の掃除のときぐらいしか開けられない物置としてしか使われない教室にいて、髪が脱色されていたというのだ。
暴行などは受けてはいないようで、それには由香は安心した。それでも、自分の意思でもないのに髪がほとんど溶けかけるまで脱色された詩織がどうしようもなく可哀想になってきた。
しばらく諮詢した後、由香は携帯電話を取り出して電話を掛けた。とにかく、詩織の変わり果てた髪を何とかしたいと思ったのだ。電話の先は由香のかつて付き合っていた美容師で、電話をするのは久しぶりだった。
その美容師はいかにも今風の男で付き合いのいい人物であったが、由香の自堕落なファッションには何かと口を出した。それが奔放な由香には合わず、そのままその美容師との関係は自然消滅したのだが。
久しぶりの勝手な電話に相手の美容師は憤慨したようだったが、それでも由香の必死な言葉にはきちんと耳を傾けていた。詩織のことを伝えると、ともかく何とするように取り次げた。
由香はその美容師の店の住所をかばんから取り出したメモに書いて詩織に渡すと、すぐにその美容室に向かうように言った。詩織はしばらく呆然としていたが、由香の意図を察するとか細い声ながらもお礼を言ってそのまま美容室へと向かっていった。
詩織の姿が見えなくなると由香は息をついて、吐瀉物と水に汚れる洗面台を諦観を持った目で見た。そしてのろのろと雑巾を探しに歩き始めた。
洗面台の鏡に映る由香の顔は濃いメイクの下でもしっかりと疲れた色合いを見せていた。

亮二はソファに座り美容雑誌を読んでいた。本来なら店を片付けて自宅に帰り一日の楽しみであるアルコールで一杯やるつもりで、腹立たしい気分ではないかといえばそれは嘘だった。それが一方的に振ってきた―と思う人物の電話のためだと尚更だった。
それでも、恋人だった―と思う人物の聞いたことのない必死の口調は亮二を店じまいをした店内に残すには十分なものであったのだが。
しかし、由香の電話は不可解なものだった。髪を脱色しすぎた詩織って女の子の髪を見てやってほしい、と懇願するかのような由香の言葉は、そのままそっくり由香に返してやりたいとも心底思う。あの由香があんなにあわてるのはどうにも腑に落ちないものがあった。
美容雑誌を読み始めてからそれなりに時間が経ち、ページをめくるのが気だるく感じ始めた亮二に店の扉が開く音が聞こえた。亮二はどんな不良娘が来たのかと思い顔を上げると、そのまま硬直した。
そこには由香の学校のジャージを来たマネキンが立っていた。
え?―と亮二は息を短く漏らした。奇妙なものを見たと跳ね上がりかけた心臓を押さえる心地で、改めてそのジャージを来た何かを見た。
その何かの顔には眉毛がほとんど見えず、その顔をひどく平坦なものに変えていた。放心しているかのような表情は読み取れず、それを抜きにして意図的に造作されたかのような顔だった。頬が赤いので、それがマネキンではなく人間だというのは何とか判断できた。
体はごく平均的なもので、ジャージの上から女性らしい膨らんだ胸や柔らかそうなお尻の輪郭が浮かび上がっている。
その頭に載せられているものは亮二にはよく分からなかった。店内の照明の明かりを受けたそれは蛍光色を思わせる極端に色の薄いペイルイエローに見えなくもない色で、所々さらに黄ばんだかのような斑があった。
それはその頭から垂れるように広がり顔に張り付き、より固まりジャージに絡みつくかのように背中の中ほどまで広がっていた。
―髪を脱色しすぎた詩織って女の子、という由香の言葉をようやく亮二が思い出したのは、その人物の目が潤んでいるのに気が付いてからだった。その頭に載せられたかのような奇妙なものがその人物の濡れた髪だと気が付くのも。
「えっと…君が…詩織ちゃん?」
亮二の言葉にその人物―詩織はコクリと頷いた。その素直そうな様子に亮二はこっそりと安堵した。そしてスタイリングチェアに座るように促すと、詩織は言われるままに従った。椅子に座り自分の姿を鏡で見た詩織の悲鳴じみた声は、そのまま聞こえない振りをした。
とりあえず亮二は詩織の髪を洗うことにした。詩織の座るスタイリングチェアの正面にある鏡を動かして洗面台を出し、そこに詩織の頭部を伏せると、据え付けられたハンドシャワーから温水を出す。そして、詩織の髪を洗い始めた。
シャンプーの白い泡に混じる詩織の髪はシャンプーに溶けるかのような色合いで、亮二は何を洗っているのか不安な気分にさせた。手触りも手から溶け落ちそうなほど柔らかく、脱色した髪を何度も洗ったことのある亮二としても経験したことのない感触だった。
いや、一度経験があった。廃棄される予定のヘアブリーチの練習用のマネキンにヘアブリーチ剤を塗布して一晩置いておいたことがあった。亮二の好奇心は翌日に後悔に変わった。そのマネキンの髪はぬめりひどく柔らかく変わっていて、洗うそばからブチブチと千切れて―
ふと思い出した感触に、亮二はぎょっとして詩織の髪の感触を確かめた。ひどく頼りない詩織の髪はそれでも詩織の頭皮から生えているようだった。思わず亮二は大きく息をついた。排水溝に絡まっている薄黄色の糸くずみたいなものはあまり考えないことにした。
それと奇妙なのは、時折詩織の体がビクリと震えることだった。洗髪中にこういう反応は亮二としても見たことがなかった。
シャンプーをすすぎ落として詩織の顔をタオルで拭いて、髪をタオルで押すように水気を吸い取る。髪を洗い終わった詩織は、やはり凄惨な姿だった。

薄黄色をさらに溶かしたような色合いの髪は、詩織の頭にべったりとへばりついているかのようで、濡れ髪といえどボリュームがまったく消え去ってしまったかのような髪だった。元の髪型がまったく消え去るかのようなヘアブリーチは亮二は聞いたことがなかった。
これでは脱色剤の本来の作用で脱色したというよりも、脱色剤で髪ごと色を溶かしたといっていいだろう。こんなになるまで髪を脱色するのはどんなヘアスタイリストでもやらないだろう。そうなると市販の脱色剤でまったくの素人がやったというのだろうか。
それでもここまでの髪になるのにかなりの時間が掛かるはず、それまで脱色剤で髪を溶かし続けたのか。亮二には詩織がこんな髪になった状況がさっぱり理解できなかった。
「詩織ちゃん、この髪…どうしたの?」
呆然と鏡を見つめる詩織になるべく穏やかに聞く。詩織の目には涙が貯まって今にもこぼれだしそうだった。
「分からないんです…気が付いていたらこんな髪になってて…私の髪…どうなってるんですか…?」
のどを痛めているのか濁ったようでも、詩織の声は想像以上に可愛らしいものだった。それに亮二は詩織の問いかけに言葉を詰まらせる。そしてそのまま無言でドライヤーと櫛を取り出して詩織の髪を乾かしていく。
ドライヤーの冷風を当てながら櫛を詩織の髪に差し込むように形を整えるように梳いていく―普通に詩織の髪は梳けなかった。脱色で髪の組織が完全に破壊されてしまった詩織の髪は櫛が通らず、櫛に力を入れると髪がゴムの様に伸びるのだ。
櫛の合間から見える詩織の頭皮は炎症を起こしているようで、あちこちから血が滲み出していた。シャンプーのときに詩織がビクリと震える理由が分かり、亮二は暗澹たる気分になった。
亮二の苦心の末に詩織の脱色し尽くされた詩織の髪は乾いた。その惨々な髪に亮二はうめき声を漏らした。
ブリーチブロンドの髪から徹底的にさらに色を抜いたかのような薄すぎるペイルイエローに変化した髪は、さらに黄ばんだ斑でなんともたとえ様のない汚らしい色合いになっていた。
髪はまるで綿のような質感で、ほぐれた毛糸の人形のような髪となっていた。詩織が元はどんな髪だったのかまったく見当の付かない状態だった。背中に掛かる髪は完全に縮れていて、もはや髪とはいえないものに変化していた。
亮二は萎えそうな気分を何とか持ちこたえさせると、鋏を取り出して詩織に髪を切ると告げた。虚ろな目でも詩織には伝わっていたようで、コクリと頷く。
使い慣れた鋏で詩織の縮れきった部位の髪を切るのに、亮二は違和感を拭えなかった。自分が髪を切っているとは感じられなかったのだ。結局、詩織の髪は背中の中ほどから肩に掛かるくらいの長さになった。その変化には詩織はまったく反応しなかった。
次に綿のような詩織の髪に補修剤を塗っていく。この補修剤は洗い流さないタイプの補修剤で、詩織の頭皮の状態を鑑みての選択だった。ともかく、詩織の頭皮が落ち着いた状態になるまでこれ以上手を出せなかった。
補修剤が塗られた詩織の髪はその質感と合わせてドレッドヘアのような見た目になった。
亮二はいくつかの補修剤と使い捨てのヘアキャップをいくつか詩織に渡して、使い方と補修剤を塗ったら一晩は髪を洗わないことと、数日後にまたここに来るように詩織に言った。詩織は黙って頷いた。
とりあえずの処置が終わった亮二は、詩織に帰宅するように告げようとした。そのとき、あることを思いついて亮二は棚の中からあるものを取り出した。眉毛を整えるアイブロウを手に亮二は、せめて眉毛くらいは何とかなるかもしれないと考えた。
眉用の鋏と剃刀で詩織のほとんど色の抜けた眉を整える、というよりも剃り落としていく。やはり詩織はまったくの無抵抗だった。そしてアイブロウで詩織の眉を描いていく。色は詩織の髪に合わせて明るめのブラウンだった。
しばらくの後眉が新しく描かれた詩織の顔を見て、亮二は心底後悔した。詩織の顔は眉の見えないのっぺりとした顔から、元の愛らしい容貌を偲ばせるものに変わっていた。
元はこうも可愛らしい少女だったこと知り、亮二は見てはいけないものを見てしまったと不意に思った。
「ありがとう…ございます…」
せめて詩織の小さな声が救いになった気がした。
その後、家に帰る詩織を姿が見えなくなるまで見送ると、亮二は再び店の片づけを始める。詩織がどうしてあんな髪になったのかは詳しくは聞けなかったものの、今の亮二にはどうでもいいことだった。帰宅後のアルコールのことも完全に意識から消え去っていた。


両親が長期の出張に出かけて久しい自宅に戻った詩織は、洗面台の前で呆然と鏡に映る自分の姿を眺めていた。
溶けかけて残った髪は補修剤で固められて、頭に生えている髪というよりも何かの不恰好な被りもののように見える。
ほとんど色の抜けていた眉毛は剃り落とされて、黒い柔らかい弧を形作っていた眉毛からアイブロウで描かれたライトブラウンの眉に変わっている。ライトブラウンの眉毛は詩織の本来の可愛らしい顔立ちをその面影を残しつつ、別の何かを感じさせた。
詩織自身はこれまで化粧などのいわゆるおしゃれにはあまり関心を払ったことは無かった。眉毛を剃り落として、新しく眉を描くファッションは聞いたことがあるものの、どうしてそんなことをするのかは詩織には分からなかった。
そんな詩織だが、今の詩織の顔には脱色しつくされた眉を剃り落とされて、その代わりの明るい茶色の眉が描かれている。これは詩織にとって初めての化粧でもあった。その顔は元の愛らしい詩織の顔を―
そのとき、詩織は違和感を感じた。体のどこかが疼くかのような、湿った感触だった。
呆然とした視線が、鏡の中の詩織の顔を捉える。
顔色はある程度は、元の血色を取り戻していた。服装はあのちょっと怖いけど親切な隣の席のクラスメートが着替えさせてくれた体操着とジャージ。かすかな自分のものではない汗の臭気と、おそらく香水の匂いは不思議と不快なものではなかった。
ブリーチ剤で傷みきった詩織の髪は洗面所の暖色系の照明に照らされて、ペイルイエローから鮮やかなオレンジ色に染まっている。かつてのしなやかなたっぷりとした黒髪とは違いほぐれた毛糸じみた髪だが、思いがけない変化に詩織は僅かならず驚いた。
ライトブラウンの眉となった詩織の顔は元の可愛らしい顔の造作を取り戻していて―どこかいやらしいものを詩織に感じさせた。
それに気が付いた詩織の体の違和感はすでに衝動的なものだった。詩織の手はその違和感の大本を探り当てていた。急に熱くなった自分の股間に詩織は指を当てていた。
詩織のささやかな好奇心を無愛想に受け入れていた秘所は、すでにかすかな粘り気を帯びた液体に濡れていた。秘所を探る指が動くたびに液体は染み出していき、詩織は体の奥が熱くなるのを感じていた。そして、そのまま指を秘割に入れていく。
指が自分の性器にに入り込んでいくと同時に、痺れるかのような衝撃が詩織の躯を襲う。詩織の口からはかすれるような悲鳴じみた息が漏れ出してくる。
不意に詩織の鼻腔に体操着に染み込んだ自分のものではない体臭と香水の臭いが届く。詩織は反射的に体操着の襟を広げると、その中の臭いを嗅いだ。由香の体臭と香水の匂いはオーガニズムに達しつつある詩織を存分に揺さぶった。
由香の金茶色に染められた髪に不自然に焼かれた黒い肌。黒いファンデーションに覆われた厚ぼったいメイクにそれに似合わない白いアイシャドウ。どれも詩織にとっては全くの理解が及ばない姿だったが、脳裏に浮かぶ由香の姿は詩織の興奮をさらに高めていった。
無意識に詩織は空いている手で自分の髪を触る。自分の変わり果てた柔らかい金髪の感触に詩織は由香の金茶色の髪を思い浮かべて、詩織は荒い息をついた。自分の髪が由香のような―それよりもさらに傷みきった金髪になったことに詩織は被虐じみた興奮を覚えていた。
詩織は鏡に映る自分の姿を由香と重ね合わせる。

―初めて化粧をしたけど由香みたいなメイクも似合うかな?
―髪もちゃんと染めたら可愛くなるかな?
―肌も由香みたいに黒くなったらどうなるんだろう?

鏡の中の詩織の姿が由香と混ざり合ってその区別が付かなくなり、詩織の口から短い悲鳴が漏れる。詩織は初めての絶頂に達した。
鏡の中の少女は傷みきった金髪を惨めに乱して激しく息をついていた。ライトブラウンの眉の下のその目に浮かんでいるものは詩織には分からなかった。


  • 最終更新:2014-03-15 02:17:12

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